駅の旅客落下防止によるホームドアの設置の有用性と見てはいけない面

晩秋というか初冬の夜長、久々に真面目な文章を綴ってみようかと思ったので、綴ってみようと思います。
ちなみに初稿は2011年9月に書いた記事だったりします。その記事にあれから5年経って変わったことなどを大幅に書き換えたものになります。
一通りの補稿はしてありますが、間に合ってなかったらごめんなさい。適宜読み替えてくださるとありがたい限りです。
ちなみにですが、毎年冬になると身内がクリスマスに電車に飛び込んだ関係で、こういうことを考えてしまうのです。
昔からの悪い癖…とみていただければ幸いです。

はじめに

あたしはホームドアをできればつけてほしいと思っている人です。
故意でない人身事故(酔客が接触などなど)、あるいはそれに順する案件(例えば接触事故とか)が減れば、列車の遅れ時分は減ると思っています。
ですが、一部のマスコミさんが言っておられるように闇雲に「ホームドアをつけろ!」なんて叫ばれては後述の様々な理由で困るのです。
今回はホームドアと鉄道事業者とを取り巻く問題を知って、それから解決策を探る契機としてもらうべく、これを書きました。
もちろん受け止め方は人それぞれですから、あくまでも意見として受け取っていただけると助かります。

1.ホームドアの設置が望まれるわけ

2001年の山手線・新大久保駅での乗客転落による旅客が救護に行くも列車防護を行い忘れ、全員が死んだ事故以後、声高に…というわけではないですが、そこそこ叫ばれているのが駅にホームドアを設置することです。
近年では、マスコミも「人身事故防止=駅にホームドア、あるいはそれに準ずるホーム柵のようなものの設置」という構図で取り上げています。
ホームドア自体は事故防止に向いています。なぜなら、線路に電車が来ない限りドアが開かないわけですから、即ち電車が駅に到着し、停止し、列車の扉が開かない限り線路に落ち得ない(→線路に人が落ちると言うこと自体が起きえない)からです。
もっとも、ホームドア制御装置自体の故障でホームドアが開く…なんてこともありえなくはないですが、それはそれとして。
もちろん”未然に防げる事故”の防止である以上、故意のもの(従来の”飛び込み自殺”など)は防げない可能性があります。
極論、ドアを越えれば線路に入れるわけですし、実際問題起こったケースもあります。
たとえばですが、2016年6月20日に東急目黒線元住吉駅(胸元あたりまでのホームドアが設置されています)で「ホームドアがあるにも関わらず」駅構内で人身事故が発生しています。
またフルスクリーン方式のホームドアを設置している、全線高架(→つまり線路に入る余地のない路線です)のつくばエクスプレスでも2014年3月13日に人身事故が起きています。ここまで来るとどうして人身事故が起きたんだとも言いたくなります。
また、”本来ありえないであろう”…そんな場所で人身事故が起きたケースもあります。
2010年03月09日の夕刻に東京モノレールの昭和島〜整備場間での人身事故がそれです。3~4mのフェンスを跳び越え当たって死んだというものですが、「全線高架」な路線でも人身事故が起きえる代表例とみていいでしょう。

さて、どんな形のホームドアがいいのか、ということですが、事故を防ぐ「ホームドア単独」よりは、より安全を高める(飛び込めなくさせる)ため、電車側面の全面を覆う「ホームドア+囲い」(フルスクリーン形)の方がいいとは思います。ただ、フルスクリーン型ホームドアには問題があり、どうしても自重があり、駅の補強工事も必要です。やっぱりホームドアの方が安いわけか、なかなか普及しませんし、それ以上にホームドアを設置するほど財政面に余裕のない鉄道会社もあります。

2.ホームドアが設置できないわけ

さて、実際問題、官公庁の機関でホームドアの設置に対する要望が出ても、各駅に設置していないのには、どうしようもない訳があります。
それをまとめて、3つの類型として下に書いてみます。

類型1:運行している車両に問題があるケース

具体的には、その駅を発着する列車の編成長やドア数・ドア間隔・ドアの幅が異なるケースです。
わかりやすく言うと、「ホームドアと車両が合わない」あるいは「ホームドアと車両のドアが合わない」ケース。個人的な意見ですが、これが一番ホームドア導入を阻害する要因だと思います。
というのも、列車側のドアとホームドアの「数が異なる」「ドアの位置が異なる」と、現状のシステムではいずれのドアも開けれません。
ここでは、例えばのケースで、あたしの一番身近な路線、阪和線を出してドア数にごとに分けてみます。
特急列車の停車する駅
1ドアの特急、3ドア車・4ドア車が同じホームに共存するケースが、和泉府中・日根野・和泉砂川で存在。
非常時に停車する堺市・長滝も同様ですが…。
なお、天王寺が環状線ホームが上の型で、阪和線ホームは下の「快速の停車駅」の型にはまる(どの型にもはまらないホームもある)特異な存在です。

区間快速の停車駅
現状、3ドア・4ドアが共存。
仮に、快速と普通車の運用を分離したとしても、少なくとも堺市・三国ヶ丘ではドア数の異なる編成が同じホームに止まることになります。

鳳以北の各停停車駅
定期の各停では3ドア・4ドアが共存しています。。

鳳以南の各停停車駅
各停で4ドア、区間快速で3ドアが混在。
ほぼ全駅で3ドア・4ドアが混在することになります。

上記の4つの形の通り、阪和線の場合、代走を考慮すると天王寺駅阪和線ホームの一部以外で設置が不可能となります。
代走を考慮しない場合でも、天王寺駅阪和線ホーム~津久野間でしかホームドアが設営できません。
このようなことが、日本全国のほとんどの路線であるわけです。

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というのが2011年当時の通説でした。今は若干状況も変わったようです。
阪急は十三駅に、阪神は阪神梅田駅に、近鉄も南大阪線大阪阿部野橋駅にホームドアを設置することを表明しています。またJR西日本会社もJR東西線や大阪駅の一部乗り場、JR京都線高槻駅外側線ホームに既に設置、あるいは設置の予定があります。
ちなみに新設しているホームドアはドアではなく、ワイヤー式のホームドアというよりはホーム柵に近いモノの方が多いようです。ドア式ホームドアよりは軽くて、ホームの補強をしなくてすむからでしょうか…と邪推してしまいます。

さて、ホームドアをつけれない理由に戻りましょう。ある程度の類型にしてみました。
類型1′:何らかの理由でドア位置を変更するケース

類型1に近いですが、車両は一緒なので別に分けました。
例えばのケースで大阪駅を挙げてみます。JR神戸線ホームはJR宝塚線と共用していて、乗車位置が別れています。
列車のドア数はおろか、車両も一緒(207/321系)なので、類型1にはまらないケースです
この類型1’は大阪駅や、名鉄名古屋駅など、混雑しやすい駅で多いように感じます。

類型2:ホーム自体に問題があるケース

このケースは、分かりやすく言うと「ホームが狭い、あるいはホームドアの重さにホームが耐えれないなどの理由で、ホームドアの取り付けができない」というものです。
阪神線・春日野道駅などがホームが狭いケースの例で、狭いケースはそう解消できません。
というのも、線路を移設する土地がない(移設してからホーム拡張するため)…などの理由です。
逆に、ホームドアの重さにホームが耐えれないケースは、耐震工事などと同時施工などで解消されていくと思います。

類型3:会社側に問題のあるケース

これは単純に言うとお金がないという理由です。
分かりやすくいうと、「ホームドアを設置するのにはお金がいるけど、そんなお金があるなら別のところにつかわないと…」というケースです。
ちなみにホームドア自体の価格は1mあたり98万円程度(100億円/16m*8両*40駅*上下線=97万ちょっと。16mは車両長。2駅多いのは、一部駅に4つのホームがあるため。)です。
ちょっと高いですよね。ちなみに2011年当時ではホームドア設備に補助金がありませんでしたが、最近では補助金が出るようになりました。ですので昔に比べて鉄道事業者はホームドア・ホーム柵を設置しやすくなっています。

補足:列車側に定位置制御は必要か。

一般に、ホームドアの着いている路線はTASC(定位置停止装置)たるものが車両側に搭載されています。
ホームドアに合わせて止めるには、あたりまえですけども、決まった位置に止めないといけないわけですから。
で、ごく一部の例外(京急線羽田空港国際線ターミナル駅やJR東西線)を除いて、TASC、あるいはATO(自動列車運転装置)を搭載した上でホームドアを運転しています。
運転士の負担を考慮すると、そんな装置が欲しくなると思います
先の例の路線はそういう支援装置はなしで運転しています。
もし仮に他の路線に拡大してホームドアを付けるとなるならば、確実にTASCなり何かを搭載すると思いますけどね。

3.ホームドアを付けるには

さて、上でホームドアを付けれないケースの3類型を書きました。
なら、逆にホームドアを付けるにはどうすればいいでしょう。
下に3つほど書いてみましょうか。

車両のドア数・幅などを統一
ホームを一定以上の幅に拡張するなどする
まとめたはいいけども…やっぱり、実現は難しいわけです。

補足:類型1でホームドアを付けるには?

運用している車両のドア数が原因でホームドアが付けれない場合、ドア数の統一が必要になります。
ほとんどの場合は運用車両を新車に置き換えるわけですが…。
上の類型1で出した阪和線のケースで考えると、仮に特急車以外を3ドア車の225系5000番台に統一するとして、161両(現在の4ドア車の在籍数)*1.3億円(1両あたりの金額)=210億円。
さらに35駅・44駅+天王寺・和歌山の2駅で14個分のホームドアを付けるわけですから、上の式を流用して、97万円*58駅*20m*6両=67.5億円。
実際には8両や9両編成が止まる駅があるため、70億円程度でしょうか。
足して280億円くらい。
モデルケースですが、最低限これだけかかります。
いかにホームドアにお金がかかるかがわかりますでしょうか。

4.おわりに。

というわけでホームドアの付けるためにはいろいろな困難があることを説明してきました。
さらにメンテナンスなどで毎年お金が吸い取られていくはずです。
ホームドアを付けたくてもいろんな理由で付けれない。
で、人身事故が起きて、叩かれる。うーん。どうしたものやら。

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